(1) がん自体が原因となった痛み 痛みの原因として最も多いのは、がんが組織に広がったためにおこる痛みです。腹膜や骨、神経などがんが影響を及ぼす部位によって、さまざまな症状が出現します。 (2) がんに関連した痛み がんで寝たきりの時間が長くなると、筋肉がやせて関節が硬くなり動かすと痛みが生じます。また栄養状態の悪化や寝たきりによってできやすくなる「床ずれ(褥瘡)」も痛みの原因になります。 (3) がん治療に関連しておこる痛み 手術のあとが痛みとして残ることがあります。また抗がん剤や放射線治療による 副作用として口内炎や末梢神経炎による痛みが出現する場合があります。 (4) がんの患者さんの別の病気による痛み がんの患者さんは免疫力が低下しています。このため帯状疱疹(ヘルペス)にかかりやすくなります。帯状疱疹の痛みは神経性の強い痛みを伴う場合があります。また頭痛や変形性脊椎症などがんの発病とは無関係な痛みもあります。 WHO(世界保健機関)は、1986年にがんの患者さんを痛みから救うために「がんの痛みからの解放」という本を発刊しました。 その中で「がんの患者の痛みは治療できる症状であり、かつ早期に治療すべき症状である」と述べています。実際に、WHO方式がん疼痛治療法は各国の臨床研究で80%以上の至適除痛率が報告されています。患者さんには痛みをコントロールするために十分な鎮痛薬を要求する権利があり、医師にはそれを投与する義務があるのです。痛みがおさまって、ようやく心のゆとりや自分らしさを取り戻すことができるからです。 ●痛みを我慢しない 患者さんにも、そのご家族にも、また医療者の間にも、「痛み止めを使うことは体によくない」、「痛みは我慢した方がよい」、「痛み止めは習慣になり、そのうち効かなくなる」、「痛み止めは副作用が多い」などといった、鎮痛薬や痛みの治療についての誤解や偏見がまだまだあります。 しかし、痛みがずっと続くとしたらどうでしょうか。痛みのせいで体を動かすことが億劫になるでしょう。食事は美味しいと感じられなくなり、眠っていても痛みのせいで熟睡できなくなるかもしれません。気持ちがどんどん暗くなって、物事を前向きに考えることが難しくなってくるでしょう。痛みが原因でイライラして、こころにゆとりがなくなったり、周囲の人に八つ当たりをしてしまうことがあるかも知れません。 なにより、我慢の限界にまで達した痛みをコントロールすることは困難です。痛みは出始めの軽い時期から適切に治療することによって、コントロールできるのです。 このように、がんの痛みを我慢することは、体やこころにさまざまな悪影響を及ぼします。 もしあなたが現在何らかの理由で、がんの痛みを我慢なさっているのでしたら、痛みを我慢するために使っているそのエネルギーを、あなたが自分らしくあるためのエネルギーに変えませんか。まずは、あなたが体験している痛みについて語ってください。
●痛みを語る あなたの痛みはあなたにしかわかりません。検査で痛みの原因を調べることはできたとしても、痛みそのものを検査する方法は残念ながらありません。 痛みをコントロールするための第一歩は、患者さんが医療者に自分の体験している痛みを語ることから始まります。「この痛みはがんとは関係ないかもしれない」、「この程度の痛みで痛いって言うなんて・・・」、「こんな痛みくらいで忙しい先生に迷惑かけられない」などといった心配はまったく必要ありません。 ●痛みの表現方法 では実際にはどのように痛みを表現したらよいのでしょうか。痛み治療の主役は患者であるあなた自身です。忙しい診療の合間にもご自身の痛みをうまく伝えるために日頃から痛みについて以下のことを記録しておくことをおすすめします。 (1) いつから痛むのか (2) どこが痛むのか (3) どのように痛むのか(ズキズキ、シクシク、重だるい、チクチク、ピリピリ、締め付けられるなど) (4) 痛みが原因でどんな不都合が生じているのか(眠れない、食欲がない、外出が億劫、寝返りができない、長く座っていられないなど、これまで出来ていたことで、痛みが原因でできなくなったことを書き出します) (5) 何をしたら痛みが強くなるのか、または楽になるのか(座ると楽、お風呂に入った後が楽、歩くと痛む、外出をした日は特に痛むなど) (6) (現在内服中の鎮痛薬があれば)薬の効き具合はどうか(できればお薬が効き始めるまでの時間や効果の持続時間について) などを記録しておくとよいでしょう。 「がん相談支援センター」では痛みに関するご相談もお受けいたしております。痛みの表現方法などについても参考になるパンフレットをご用意してお待ちしています。おひとりで悩まず、まずはお気軽にご相談ください。 緩和ケアとは、身体的な苦痛や気持ちのつらさを少しでも和らげるための支援を行い、患者さんが“その人らしく”過ごせるようにする治療やケアのことです。 緩和ケアは病気の状態や時期とは無関係に、身体や気持ちのつらさ、病気によって生じるお仕事や生活面などの困り事に応じていつでも受けることがでます。 がんの治療に向き合うためには、体力も気力も必要になってきます。がんと診断された早期から治療に伴うつらい症状や気持ちを緩和することがんと向き合う力になることもあります。 ▲緩和ケアは終末期医療と同じ意味ではありません。がんと診断されたときから、がんと向き合い治療を継続していくためにも緩和ケアが必要な場合があります。 がんなどの生命を脅かす病気を持つ患者さんやそのご家族がつらさを和らげ、その人らしく過ごすための支援を目的として、施設内や地域で活動するチームです。緩和ケアを必要とする患者さんのつらさはお体のことに限らず、気持ちやお仕事、生活面などの困りごとなど多岐にわたります。そのため緩和ケアチームは色々な専門的職種で形成されています。 金沢医療センターの緩和ケアチームは2005年4月から稼働しております。主治医や担当看護師などと協働しながら患者さん、ご家族のつらさの緩和を行っています。また地域連携による切れ目のないケアの提供や、医療従事者への教育、院内および地域での緩和ケアの普及などの役割も担っています。平成28年4月から当院は「緩和ケア内科」を標榜させていただき活動しています。 緩和ケアチームのメンバーは医師、看護師、薬剤師、栄養士、医療ソーシャルワーカーで構成され、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など院内の多職種と協力しながら活動しています。 ●入院患者さんの診察 入院中の患者さんの相談に対しては、チームのメンバーがお部屋までうかがい診察致します。つらさの原因や状態に応じて、お薬を調整をしたり、お薬以外の方法でつらさを和らげる方法がないかなどをチーム全体で検討します。また退院準備や外泊にあたっては、利用できるサービス(社会資源)などについても情報提供をさせていただきます。必要に応じて院内の他チーム(口腔ケアチーム・栄養サポートチーム、褥瘡チーム、ペインクリニック(脳神経外科)など)との連携を図り症状緩和に努めています。緩和ケアチームの診察を希望される場合は、主治医または担当看護師までご相談下さい。これまでの主治医やスタッフとの関係が変わることはありません。がん相談支援センターでもご相談をお受けできます。
●緩和ケアの外来診療について 緩和ケア内科の診察予約が必要です。初診再診とも月曜から金曜受付で完全予約制となっております。受診希望に関する詳細は「がん相談支援センター」または「地域医療連携室」で承っております。なお当院には緩和ケア病棟・ホスピスはありません。他院からの紹介患者さんにおかれましては、外来での受診のみとなることをあらかじめご了承ください。 ●費用について 緩和ケアの診察費には保険診療が適用されます。 ※1カ月の医療費(健康保険による医療費の自己負担額の合計)が一定額以上になる場合には、高額医療費制度が適用されます。 詳細についてお知りになりたい場合は、1階の医療福祉相談室にお尋ねください。
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