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現在の高齢者社会で急速に増加している動脈硬化による病気につき説明します。


1.大動脈瘤

動脈壁が動脈硬化などにより傷んでくると血圧に耐えられなくなり膨らんできます。 一度動脈の一部に膨らみが出来るとその部に圧がかかりどんどん外方に張り出し、動 脈瘤を形成します。正常の太さの2倍以上になると動脈瘤と診断します。 動脈瘤は出来る場所により次のように分けます。

1)胸部大動脈瘤
胸部レントゲン撮影などで偶然発見されることが多い。声がかれてくることで気付くこともあります。

2)腹部大動脈瘤
臍を中心に拍動性の塊として触れます。太った人は発見されにくいことが多いので、血圧の高い人などでは超音波で検査すればはっきりします。

3)末梢動脈瘤
その他の細い動脈にも瘤はできます。脈を打っている腫脹があったら見てもらってください。

【破 裂】
動脈瘤の恐ろしいのは、それまでは単に動脈が膨隆しているだけでほとんど症状を呈さないのですが、一度この膨れた所が破れると血液が外に洩れ、大出血を来たし、死に至ることです。破れるときには激しい痛みを生じ、出血を伴うため血圧が低下し、ショックとなることもあります。

【治 療】
1)血圧の高い人は動脈瘤が出来やすいし、出来ると急速に大きくなる危険があるので血圧を上げないよう注意してください。破裂の原因となるのは、重い物を持ち上げる、排便の際、力をいれていきむ、腹部大動脈瘤では急に背を伸ばした時などがあります。

2)人工血管置換;動脈瘤の治療は破裂を防ぐことが原則です。このため、太くなった動脈を含む動脈を切開し、正常な動脈間に人工血管を植え込み、その上を動脈瘤の壁で覆っておくのが標準的な治療です。

<胸部大動脈瘤に関するちょっと詳しいお話し>

胸部大動脈瘤は10万人に対して3人ほどの患者さんが毎年新しく発症するとされています.症状は嗄声(声のかれ)が出ることもまれにありますが,通常全くありません.腹部の動脈瘤であれば,お腹に“ドキドキするこぶ”をふれることもしばしばあるのですが,胸部は肋骨や胸骨という骨に囲まれており,触れることができないため,症状が出にくいのです.健康診断や他の病気で病院にかかり,レントゲンやCT検査を行った際に偶然見つかることが多い病気です.
しかし,症状はないもののある程度の大きさを超えると,破裂の危険性が高くなります.しかも一旦破裂すると救命率は10%程度,病院にたどり着けずに亡くなる人も半数以上と極めて危険度の高い病気で“サイレントキラー”(静かな殺し屋)と表現する医師もいるほどです.
治療が必要となる条件は
@大きさが5.5cmを超えるもの(ガイドライン)
腹部では5cm以上が治療対象となります
A嚢状大動脈瘤:1部が弱く嚢状(でべそのように1部膨らんでいる)もの
嚢状のものは破裂しやすく比較的小さくても治療を行います
B半年で5mmを超える拡大(通常動脈瘤は1年に1-2mmしか拡大しません)
とされています.

■胸部大動脈瘤の治療

胸部大動脈瘤の治療は外科的手術(人工血管置換術)と血管内治療(ステントグラフト内挿術)の2つに大別されます.
胸部の外科的手術では胸を開いて瘤を人工血管に置き換えます.(心臓外科の項目をご覧ください.)人工心肺装置を用いて下半身や臓器,脳の血流を維持しながら行う必要があります.合併症として出血,脳梗塞,腎不全などの臓器不全,肺炎,感染等の可能性があり,ときに下半身の麻痺が生じることもあります.
これに対して,現在は,体への負担が少ない,ステントグラフト内挿術という方法が行われ(上図)当科でも積極的に行っています.腹部大動脈瘤の項目で詳しく述べられていますが,ステント(金属の筒)とグラフト(人工血管)を縫い合わせて一体としたものがステントグラフトで,胸を開かずに,股の血管からカテーテルを用いて瘤の中へ埋め込みます.全ての方に使用できるわけではありませんが,上述の通り,身体への負担が非常に小さいのが特徴で,術後の安静や入院期間が短縮されます.本邦では、胸部の企業性ステントグラフトは腹部より遅れて2008年に認可されました.当院は既にその実施施設に認定されております.
また,胸部のステントグラフトには,CTAG(GORE社),VALIANT(MEDTRONIC社),ZENITH ALPHA(COOK社),RELAY(BOLTON社),NAJUTA(KAWASUMI社:日本製)の5種類があり,それぞれについて個別の実施資格が必要です.当科ではすべての機種について指導医(実施医師の指導を行う資格)が常勤しております.


また,最近では単純な下行大動脈の瘤だけではなく,頭部への3本の血管が分かれる大動脈弓部に及んだ大動脈瘤に対しても,人工血管などでバイパスを置いてからステントグラフト治療を行うdebranch(デブランチ:枝を本来の位置から外すという意味)法や頸動脈に煙突のように細いステントグラフトを大動脈のステントグラフトと並べて挿入するchimney(チムニー:煙突の意味)なども行われています(上段の図).さらに,弓部大動脈瘤に対して,3Dプリンターで患者さんの大動脈と寸分たがわぬ模型を作り,頭に行く血管に合わせて穴があけられている,国産の開窓型ステントグラフトが開発され(下段の図),実際に体を切開して行う弓部置換(心臓外科の項目をご覧ください)と全く同等の治療効果が得られるようになっています.この方法により,大げさでなく開胸手術に比べて1/10以下の侵襲(体への負担)で,弓部大動脈瘤治療が可能となっています.

最後は手術(人工血管置換術)とステントグラフト治療のハイブリッド(あいの子)治療についてです.車では電気とガソリンの両方で走るものをハイブリッド車と言いますが,胸部大動脈治療では実際の切開とカテーテル治療の2つを組み合わせた治療をハイブリット手術と呼びます.これは上行大動脈から腹部大動脈近くまでの広範囲にわたる胸部大動脈瘤や大動脈解離に対する最新治療で,すべてを1回の治療で行い完全に治すこともできるようになっています.
これまで2回に分けて大手術を行っていた治療に比べ,体への負担,入院期間,入院費などが大幅に少なくてすむようになっています.


<腹部大動脈瘤ってこんな病気です>
腹部大動脈瘤とは、左図の矢印で示すように腹部の大動脈が瘤状になって「こぶ」の様に膨らんだ状態です。大きくなると破裂する危険があり、破裂した場合の死亡率は全体として約80%で、緊急に手術ができたとしても半数近くが亡くなられます。特に直径5cmを超えると、急速に破裂の危険性が増加することがわかっており、5〜6cmの大きさでは5年間に20-30%程度の確率で破裂が見込まれます。そのため5cm程度の大きさになったら、治療が必要になります。

治療方法には大きく分けて
■外科的手術(人工血管置換術)
■血管内治療(ステントグラフト内挿術) 
の二つがあります。

■外科的手術(人工血管置換術)
従来の標準的な治療法です。全身麻酔のもとでお腹を切り開き、瘤の上下で血流を遮断し、瘤を切り離して、布製の人工血管で置き換え、縫い合わせます。
相応の体の負担があり、術後数日は、絶食、安静となります。また瘤を切り開く際に出血するため、輸血する可能性は比較的高くなります(全体の1/3ほど)。一般的には手術の際、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全等の合併症が生じる可能性が併せて5%程あります。開腹による腸管の麻痺・癒着の可能性が2-3%あります。その他、性機能障害、下肢虚血、腹水、呼吸器合併症(肺炎など)等の可能性もあります。成績は安定していますが、手術による1ヶ月内の死亡率は2-3%と言われていますが、当院では過去5年以上手術死亡はありません。
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■血管内治療(ステントグラフト内挿術)
ステントグラフトとは,人工血管(グラフト)に金網で出来た筒(ステント)を縫い付けたものです。両股の血管を開いて、カテーテル(細長い管)を通じて、瘤の中に埋め込み、瘤へ血流が流れ込まないようにする治療法です。体を切る部分は股だけのため、体の負担が少なく、食事、歩行も早期からできます。入院期間も短くてすみます。欧米のデータでは、脳、心臓、腎臓、呼吸器等の合併症も比較的少ない結果です。カテーテル操作に伴う血管損傷1-6%、塞栓症(血の塊やコレステロールなどが血管内に飛び散る)が1%ほどに認められます。造影剤アレルギー(吐き気、じんましん、ショック)の可能性は血管造影検査と同様です。1ヶ月内の死亡率は1%未満と良好です。ただし、血流が瘤へ流れ込んでこないか定期的に(例:1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後、1年後、以後1年毎)CTスキャン等で検査を行う必要があります。2年後で5%ほどに漏れが認められますが、必要な場合は追加処置を行います。


ステントグラフ挿入術の実際を左に示します。 右股の動脈から柔らかい筒に格納したステントグラフト本体を腎動脈の下から大動脈瘤内に留置し,左股の動脈から左脚を追加します.両股の切開(左最下段の図)だけで手術可能です。

手術前後の血管造影を左に示します。ステントグラフトにより腹部大動脈瘤(こぶ)は消失しております。

この治療法は欧米では以前から行われていますが、日本では企業製のステントグラフトが使用できなかったため、各施設の手作りで一部の施設でのみ行われてきました。しかし、ようやく日本でも初めて企業製のステントグラフトが承認されました。まだ使用できる施設は限られていますが、当院は今までの実績から実施施設に認定され、既にステントグラフトの埋め込みに成功しています。

このようにステントグラフト内挿術は,患者様に与える侵襲が以前の全身麻酔下に開腹して行う手術に比べて極めて小さいです。 しかし,全例に施行できるわけではありません。 当院では患者様ごとに慎重に精査し,最適の方法を選択しております。


2.閉塞性動脈硬化症

「閉塞性動脈硬化症」とは、足の動脈が動脈硬化のため狭くなったりつまってしまい、足に充分血液が流れず血流障害を起こした状態です。 足は筋肉量が多く運動も激しいので血液が不足するとその減少度により症状が変わります。最初は寒い日に足が冷たく感じたり、寝床に入っても暖まるのに時間がかかるように感じます。もう少し進むと、歩行時に足・大腿や腰の筋肉が固く、痛くなってきます。さらに進むと足の色が赤紫色あるいは白っぽく血の気が無くなり、ちょっと歩いても痛くなるようになり、寒い日などはじっとしていても痛みが去らない状態になります。時には、足趾先が黒くなったり潰瘍を作ったりします。この状態を放置していると突然、残っていた太い動脈が詰まったりして足が大きく虚血になり、切断が必要となることもあります。

○急性動脈閉塞
動脈硬化はある一ヶ所の動脈だけがなるわけではなく、多くの動脈に生じます。このため、動脈が急に閉塞し動脈血が流れなくなると、その末梢の組織に血液が行かなくなり、酸素が不足し、最終的には壊死に陥ります。この状態はその末梢臓器により異なり、脳塞栓、心筋梗塞や下肢の急性壊死となり、生命にも関する重大な症状を引き起こします

同じ閉塞性動脈硬化症でもその支配する臓器により進行に伴う症状も異なります。

1)冠状動脈
心臓を栄養する動脈に狭窄や閉塞が生じて起こる状態が狭心症と心筋  梗です。狭心症は冠動脈が細くなっているけれども心臓への血液が途絶えていない状態です。このため、運動したり興奮したりして心臓が早く働くと痛く感じるのです。この痛みは5分以内でニトロール剤を服用すると治ることが多い。これに対し心筋梗塞は冠動脈が閉塞したり、一時的に閉塞したりして血流が停止し、心臓の一部の筋肉が死んでしまった状態です。この範囲が小さければ心臓はその機能を保つため生き延びることが出来ますが、多くに筋肉が傷んでしまうと心臓は十分収縮で  きなくなり全身に血液を送れなくなり死亡につながります。

2)下肢を栄養する動脈
足は筋肉量が多く運動も激しいので血液が不足するとその減少度により症状が変わります。最初は寒い日に足が冷たく感じたり、寝床に入っても暖まるのに時間がかかるように感じます。もう少し進むと、歩行時に足・大腿や腰の筋肉が固く、痛くなってきます。病気の進行は歩行距離が段々短くなることにより解ります。さらに進むと足の色が赤紫色あるいは白っぽく血の気が無くなり、ちょっと歩いても痛くなるようになり、寒い日などはじっとしていても痛みが去らない状態になります。時には、足趾先が黒くなったり潰瘍を作ったりします。この状態を放置していると突然、残っていた太い動脈が詰まったりして足が大きく虚血になり、切断が必要となることもあります。

予防と治療
1)動脈硬化の予防
動脈硬化は病気です。高血圧、塩分の採りすぎ、高脂血症、糖尿病と喫煙など危険因子は解っています。これらをコントロールしいつまでも弾力性を持った動脈でいたいと思います。

2)進行の抑制
日常生活から動脈硬化を進行させる因子を出来るだけ少なくする努力をします。必要に応じ、最も適した薬を服用します。これらの薬剤は一度始めたら出来るだけ継続し、中止や減量の際は慎重に行ってください。急に中止するとかえって危険なこともあります。

3)カテーテルによる拡張
最近急速に発展した方法で、バルーンのついたカテーテルを動脈の狭くなった所へ誘導し、そこでバルーンを拡げ、狭窄部を拡張する方法です。この方法でうまく拡がり、それが長く続く例もあるのですが、再狭窄もかなり見られます。これに対し、バルーンの外側に金属の網状の筒を持っていき、これを一緒に拡げ、その金属のワッパをその部位に留置してくる方法が行われています。ステント療法といいます。これにより長期成績は改善しています。


4)手術療法:動脈の狭窄や閉塞に対し、種々の手術療法が行われます。
*内膜摘除とパッチ拡大;動脈の狭くなっている部分を削り取り拡げる方法、狭くなった部を切開し、パッチを当てて拡げる方法、この両者を合わせて行う方法などがあります。
*バイパス作製;閉塞している動脈を残したまま、開存している中枢から末梢まで自分の動脈や静脈、太い血管では人工血管を用いバイパスを作り、末梢への血流を再建する方法です。