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■第2回 ピロリ菌と血液疾患

(1)ピロリ菌とは
従来胃の中は強力な胃酸があるため、無菌であると考えられていましたが、1982年に胃の粘液の中で生息する細菌が発見されました。これがピロリ菌(Helicobacter pylori : H.pylori )です。その後のいろいろな研究から、この菌が胃潰瘍や胃癌などの胃の病気に深く関わっていることが分かってきました。また近年、胃以外の疾患(動脈硬化、蕁麻疹、糖尿病、シェーグレン症候群など)でも関連が疑われています。血液疾患領域でも、MALTというリンパ腫の一種はピロリ菌が原因であり、除菌により治癒することが分かっています。

(2)特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
ITPは明らかな基礎疾患が無く、血小板数が減少するため種々の出血症状をひき起こす病気です。血小板に対する自己抗体ができて、脾臓で破壊されるために、数が減少すると考えられています。血小板は出血をとめる働きをしており、この数が減るといろいろな場所から出血し易くなります。

血液の病気と胃の中のピロリ菌感染とは一見関係なさそうですが、ピロリ菌陽性のITP患者にピロリの除菌治療を行うと血小板数が増加することが相次いで報告されてきています。有効率は報告により若干異なりますが、50?60%程度の患者さんで血小板の増加があるようです。従来ITPの治療は副腎皮質ステロイドの長期的な内服または手術による脾臓摘出であり、副作用や侵襲性に問題がありましたが、それに比べて安全性と有効性の面で画期的な治療法となり得ます。しかし全例に効果があるわけではなく、またなぜ効くのかということも分かっておらず、今後の検討課題であろうと思います。

(3)鉄欠乏性貧血(IDA)
IDAは最もよくみられる血液疾患の一つであり、原因として慢性消化管出血、婦人科出血、鉄吸収障害などがありますが、消化管内視鏡やエコー、CT等で調べても、約30%の患者さんで原因不明で、鉄剤治療をしても再増悪を繰り返すことがありました。こうした原因不明のIDAでピロリ菌陽性の患者さんに除菌療法を行うと、貧血が治ったという報告が増えてきました。
ピロリ菌の検査は外来で簡単にできますし、除菌治療も1週間抗生物質を服用することで90%程度の除菌率が期待できます。副作用も一時的な悪心や下痢などで重篤なものはないので、長期的にITPやIDAで悩まされている方は一度ピロリ菌の検査を受けることをおすすめします。(文責 池ケ谷)