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■第7回 悪性リンパ腫は「チョップ」で治す!

悪性リンパ腫はリンパの癌(厳密には悪性腫瘍)です。しかし、治療は他の多くの悪性腫瘍と異なり手術が選択されるケースは少なく、主に抗癌剤や放射線が用いられます。このため血液内科医が中心になって診療にあたる事が多い病気です。

そこで今回のタイトルの「チョップ」ですが,悪性リンパ腫の代表的な治療法なんですね.これは抗癌剤の治療の名前ですので,もちろん患者さまを「叩く」ような治療はしておりませんのでどうぞご安心を.

この治療法は1970年代後半に登場しました。英語ではCHOPと表記し、これは治療で用いる抗癌剤の名前の頭文字を取っています。治療で用いる薬が一目で分かって覚えやすいからです。C=サイクロフォスファマイド、H=アドリアマイシン、O=オンコビン、P=プレドニンを現しています。「ん? ちょっと待って、Hが何故アドリアマイシンなの? Aじゃないの?」という声が聞こえてきました。ごもっとも。確かに変ですね。実はアドリアマイシンはハイドロキシダウノルビシンという別名を持っていて、その頭文字がHなのです。命名者はどうしてコパ(COPA)とかコープ(COAP)でなくわざわざチョップにしたのでしょうか?

ここからは私の推測ですが、理由は3つあると思います。

1つは研究者が病気と闘う気持ちを表現したかった事(チョップで巨大な敵に立ち向かうというイメージでしょうか)。

2つめはこの治療が良く効くという事。例えば握りこぶしくらいの大きさの悪性リンパ腫が治療が始まった数日後に豆粒大くらいまで小さくなったり,あるいは消失したりすることもあります。この変化はチョップの名に相応しいインパクトがあります。

3つめはこの素晴しい治療を多くの医者に知ってもらう目的で、印象に残りやすい名前を選んだという事です。オリックスの仰木監督が鈴木一郎をイチローと名づけたように。チョップ療法が世に出て30年、今や世界中にこの治療法を知らない血液内科医はおらず、命名者もきっと満足されているのでは…
でも、まずは名前に見合った実力がないと話になりません。チョップ療法もイチローも先に実力があったから命名者が頭をひねって考えてくれたのです。我々も皆様から「素敵な名前をつけてあげたい」と思っていただけるような、良い診療を提供出来るチームにならねば、と努力する毎日です。

by ビタミンS